電子顕微鏡の登場

小さい物を見るのに、なぜ、波長の短かさが関係するのでしょう。波長とは文字通り「波」の「長さ」です。池に石を落としたときに広がる波紋の間隔がそれです。

我々は物に当たって反射した光をみています。人が感じることのできる光、可視光は、1万分の4から7mmほどの波長です。細い髪の毛は10分の1mm程度ですから、可視光の波長はその千分の1程度の小ささです。
解像度と波長、ボールのレーダー
ここで、光をボールに置き換えてみます。ボールを転がして、物に当たって、手元に戻ってくれば(反射すれば)、その方向に、物がある事が分かります。
目隠していても、壁ほどの大きさのものなら、サッカーボールやバランスボールのような大きなボールを使っても、壁のあることが分かります。
さて、床に寝かして置いた辞書ならどうでしょう。今度は、ゴルフボールぐらい小さいボールを使わないと、戻ってきません。サッカーボールなら上を乗り越えて、向こうへ行ってしまいます。辞書を2冊重ねれば、野球のボールぐらいで、分かりそうです。このことから、少なくともボールの半径程度の大きさがないと、反射で物が在るか無いか判断できない事が予想できます。
細菌は大きいものは10分の1mm程度なので、可視光の波長の千倍あることになります。ボールの千倍の大きさがありますから、十分観察できることになります。ウィルスの大きさは光の波長と同じ千分の1mm以下ですから、ゴルフボールでゴルフボールを見つけるようなものです。形どころか有無の判定もできないでしょう。
細菌、ウィルスと光の波長
より小さな物を観測するには、より小さなボールが必要になる訳です。そこで、光の代わりにもっと波長の短い電子線でを使おうと開発されたのが電子顕微鏡です。
電子顕微鏡でよく使われる電子線の波長は、光の10万分の1以下、10億分の1mmの単位ですから、ウィルスでも詳しく観察できます。
ちなみに、高校で物理を勉強された方ならよくご存じの核分裂で生じるベータ線も電子線で、家電製品ではテレビのブラウン管も電子線を発生させています。同じ家電製品でも電子レンジや携帯電話で使っているのは電波で、全くの別物です。電子レンジで使われている電波の波長は12cmほどです。電波を使うレーダーの波長は、開発当初、数mで、船や飛行機ほど大きくないと見つける事ができませんでした。

ところで、波長をボールにすり替えたところに、納得がいかない方も多いでしょう。それもそのはず、高校の物理で習う内容をはしょっているからです。物理学の発展の大きな一歩となるこの考え方については、別途説明する事にします。